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菌と鉄3巻の感想※敗れたエーテル、絶望の中待っていたのは、人類の過去と希望

菌と鉄3巻

菌と鉄2巻では、弱き命をつないで、アミガサで支配する博士に、兵器「エーテル」を打ち込むことに成功した、反乱組織エーテル。

しかし、生物の頂点であるアミガサに対抗することはできません。

ただ、エーテルの指揮官グラントには、あるビジョンが・・・。

3巻では、人類がアミガサに支配されるまでの過去が描かれます。

絶望的でしたが、希望も見えてきます。

菌と鉄3巻の基本情報

漫画名菌と鉄 3巻
発売日2022/11/9
著者片山あやか
出版社講談社
掲載誌別冊少年マガジン
漫画アプリマガポケ

目次

第11話 追跡
第12話 敗走
第13話 邂逅
第14話 蠅の王
第15話 研究所へ

菌と鉄3巻の感想

人類がアミガサに、どうやって支配されたか・・・

3巻のはじめは、2023年の地球からスタートします。

世界各地でアミガサダケが大量発生。

アミガサダケは特殊で動物の死骸を栄養源とする腐生菌、植物の生きた根と共生する菌根菌の両方の性質があり、さらに、昆虫などに寄生する冬虫夏草菌の特徴もあります。

全ての生物から養分を吸い取れるという大きな脅威ですが、当時、その怖さに気づく人間は少なく、ワイドショーでは、食べても問題ない?としか報道されていませんでした。

3巻では、ダンテらにとっては過去、わたしたちにとっては未来の、アミガサがどうやって人類を支配したかが並行して描かれます。

逃げるグラント

アミガサは、裏切ったグラントを追います。

グラントのビジョンを信じて、エーテルは、グラントを逃がします。

仲間を囮に逃げるグラント。

グラント自身、囮にすることに罪悪感を感じますが、自分が視た未来を信じるしかありません。

アオイ、ダンテ、そして一緒に行動することになったラミ・バルガは、グラントを信じ、先を進みます。

創まりの5人の一人、ジャンプの追撃を振り切り、グラントと合流することに成功。

グラントのビジョンが示した場所に進んだものの、先が見えません。

頭脳を極限まで高めて、未来が視れるグラントですが、だからこそ、計算できない未来に絶望します。

賢い人って、勝手に未来を決めます。

勝手に未来を決めて、弱気になります。

未来は誰にも分らないはずなんですけどね。

異形の人類との出会い

どうしようもないと思われましたが、アオイが見つけました。

平凡な少女ですが、何かがおかしいと気づく観察力があります。

本物じゃない木をみつけ、そこから、地下への入り口を見つけます。

そこで待っていたのは、異形の人類でした。

3巻の最初から描かれていた過去が、ここで繋がります。

最後の希望を信じて、生きながらえてきた人類。

ここで、ダンテらは、アミガサダケに支配された人類の過去を聞きます。

あまりにも長生きで見た目も醜悪なので、最初は、同じ人間と理解できません。

でも、理解できたのが、命を大事にという言葉と祈り

命が大事というのは、人間的な感情なのかもしれません。

蠅の王

エーテルが失敗しましたが、新たな計画を人類は教えてくれました。

それは、蠅の王、ベルゼブブ計画です。

生物の頂点に立つアミガサは、人工的な兵器では倒すことはできません。

生物には生物を、それがベルゼブブ計画です。

計画の元になる文研として、レイチェルカーソンの沈黙の春という本が出てきます。

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新潮社
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1962年にアメリカで発表されたDDTなどの化学薬品の危険性を訴えた著書です。

人間が自然をコントロールすることの愚かさを説いた本。

菌と鉄が書きたいことが少し見える気がしますね。

9人のアザ持ち

待っていた人類もダンテらに希望を見出します。

それは、アザです。

エーテルの実験の成功の証しがアザ(痣)です。

人工の天才を作る実験の成果として、特徴的な能力をもつ人間が生まれると、絶滅したはずの頂点捕食獣のアザが現れます。

能力の代償に、一つ欠落した部分がありますが、それは人類にとっての希望。

ダンテにはオオカミ、グラントにはヘビのアザがあります。

逆襲するため、ダンテらはアザ持ちをもとめて、アミガサの研究所へ向かいます。

面白いのが陽動作戦です。

それは音楽、文化、芸術です。

管理された社会で失われていた‟それ”を、人類は教えてくれました。

音楽、文化、芸術が武器になる。

現代にも通じるものがあります。

まとめ:新たなる希望

スターウォーズみたいですが、絶望の2巻、3巻は新たなる希望ですね。

とても良かったのが、ダンテの言葉です。

恋愛もないアミガサが支配する世界。

研究所へ向かうダンテは、アオイにいいます。

「でえとしよう」

とてもカワイイ言葉。

ダンテには無事に戻って、でえとしてもらいたい!

死亡フラグにならないように!